Q&Aまとめ集 ハラスメント

Q:部下が一度教えた仕事について、もう一度質問してきたので「なぜメモを取らなかったのか?」と注意したところ、パワハラだと訴えられました。

回答

「なぜメモを取らなかったのか?」と注意したことがパワハラに該当するかどうかは、注意の仕方や頻度、職場の状況、部下の受け止め方によって異なります。具体的な状況により異なりますが、以下の観点で判断が行われることが多いです。

厚生労働省が示す職場のパワーハラスメント(パワハラ)の定義は、次の3つの要素が揃う場合に該当します。

  • 優越的な立場を利用した言動:部下が業務を教えてもらう立場にあり、上司が指導する側であることから、立場の優位性はあるとみなされるでしょう。
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動:今回の注意が業務の改善を目的としたものであれば、必要な範囲内とみなされる可能性もあります。しかし、注意の際に過度に厳しい口調や侮辱的な言葉を使ったり、メモを取らなかったこと自体を過剰に責めるような対応があった場合は、パワハラとみなされる可能性があります。
  • 相手に精神的・身体的な苦痛を与える、または職場環境を悪化させる:相手がその指摘により強いストレスやプレッシャーを感じ、職場環境が悪化したと感じる場合、この要素が該当する可能性があります。

「なぜメモを取らなかったのか?」と尋ねること自体は、業務上の指導の一環として、メモを取る習慣を促すための指摘として理解される場合が多いです。パワハラとならないためには、冷静かつ丁寧に伝える、建設的なアドバイスを含める、繰り返しや執拗な指摘を避けるなどの注意が必要です。

Q:どうしても急な仕事が入りやすい業界で、社員に急な残業をしてもらわなければならないことがよくあります。パワハラにならないか心配ですが、どうでしょうか?

回答

「急な残業をお願いする際、以下を守ればパワハラにはなりません。

①理由の説明

理由を丁寧に説明し、社員の事情(家庭の都合や体調など)に配慮します。威圧的な命令や拒否を理由に評価を下げるなどは避けましょう。

②36協定の遵守

会社は36協定を締結し、法定の残業時間内で運用する必要があります。

③代替措置や配慮

頻繁に急な残業が発生する場合は、業務分担やシフト制を導入して負担が偏らないよう調整します。代休や適切な残業代の支払いも欠かせません。

こうした配慮や環境改善を徹底すれば、社員の理解も得やすく、パワハラとみなされるリスクを減らせます。必要に応じて労働法の専門家に相談するのも有効です。

Q:社内恋愛を禁止にしたいです。ハラスメントになりますか?

回答

社内恋愛を全面的に禁止することは、社員のプライバシー権を侵害する可能性があり、ハラスメントとみなされることがあります。
憲法で保障されている「個人の自由」や労働基準法の観点からも、業務外の私生活にまで会社が強く干渉することは適切ではありません。

しかし、社内恋愛が職場環境に悪影響を与える場合、一定のルールを設けることは可能です。

上司と部下の恋愛を制限することで、パワーハラスメントやえこひいきのリスクを防ぐ、勤務時間中の過度な親密なやり取りを禁止するなどのルールは合理的な範囲とされます。
また、職場でのトラブルや公私混同が発生した場合に備え、恋愛関係が業務に影響を与えた場合の対処方針を明確にすることも重要です。

全面禁止ではなく、「社内恋愛は禁止しないが、業務に支障が出た場合は適切な措置を講じる」という方針を打ち出すことで、社員の自由を尊重しつつ、健全な職場環境を維持できます。
禁止するのではなく、適切なガイドラインを設定することが、企業にとっても従業員にとっても最善の対応となるでしょう。

Q:仕事が終わっていないのに、定時で帰る社員がいます。どのようにすれば良いでしょうか?

回答

どうしても仕事がある時に残業してもらうための方法として以下の手順があります。

①残業の必要性を事前に共有し、納得感を持たせる

「なぜ残業が必要なのか」を社員が理解しないと、協力を得るのは難しくなります。事前にスケジュールを共有し、「この日は業務が立て込む可能性がある」と前もって伝えることで、心の準備ができます。また、緊急性や影響を具体的に説明し、納得感を持ってもらうことが大切です。

②柔軟な働き方やインセンティブを導入する

残業を依頼する際には、「翌朝の出勤時間を調整する」「食事補助を出す」など、負担を軽減する工夫をしましょう。また、普段から不要な残業を削減し、本当に必要な時だけ依頼することで、「やむを得ない」と納得してもらいやすくなります。

また、普段から定時で帰宅できるようにする努力も大切です。
方法を2つ挙げます。

①仕事の優先順位と期限を明確にする

社員が定時で帰るのは「やるべき仕事は終わった」と判断しているからかもしれません。タスクの優先順位や締め切りを明確にし、「どこまでが今日中に必要なのか」を具体的に伝えましょう。定期的な進捗確認を行い、仕事の抜け漏れを防ぐ仕組みを作ることが重要です。

②業務の分担と効率化を見直す

特定の社員に仕事が偏っていないか、無駄な作業が発生していないかを確認し、チーム全体で業務を適切に分担できるようにします。業務フローを見直し、ツールを活用して業務効率を向上させることで、限られた時間内で仕事を完了できる環境を整えましょう。

Q:全社員が参加する年1回の飲み会を開催したいと思います。半額会社から負担しますが、半額は個人負担にしたいのですが、問題ないでしょうか?やはり参加を強制する場合は会費は全て会社が持つ必要がありますか?またそれは労働時間にカウントされますか?

回答

会社が飲み会の会費の半額を負担すること自体は問題ありません。会社の福利厚生の一環として、社員の参加を促進するために行うことは一般的です。ただし、残りの半額を社員に負担させることについては以下の注意が必要です。

①参加を強制する場合

もし参加を「強制」する場合は、会社が会費を全額負担することが望ましいです。強制参加の場合、社員が自分の意志で参加しているわけではないため、参加にかかる費用を全額会社が負担するのが一般的なルールです。強制参加において社員に会費を負担させることは、不公平感を生む可能性があるため避けるべきです。

②労働時間にカウントされるか

飲み会自体が業務外のイベントであっても、もし参加が強制であり、その時間が業務の一環として扱われる場合、労働時間として扱うことが一般的です。ただし、飲み会が業務外のリクリエーションとして位置付けられている場合、その時間は通常は労働時間には含まれません。

飲み会が任意参加であり、業務の一部として行われるものではない場合、その時間は労働時間にカウントしないのが通常です。従って、社員が業務後に参加しても、それは仕事の一環とはみなされず、通常の業務時間には含まれません。

結論

会社が半額負担することは問題ありませんが、強制参加の場合は会社が全額負担する方が適切です。

飲み会が業務外のイベントとして行われる場合は、労働時間にはカウントされません。ただし、強制的な参加であれば、参加時間が業務の一部と見なされる可能性がありますので、その点を踏まえて判断することが必要です。

Q:部下からの上司への暴言に目が余ります。減給や解雇などのなんらかの処置ができますか?

回答

部下から上司への暴言(ハラスメント、侮辱、名誉毀損等)が確認され、業務に支障をきたすような状況であれば、会社として懲戒処分(減給・出勤停止・懲戒解雇など)を行うことは可能です。ただし、処分を行うには慎重な手続きと証拠の確保が必要です。

①懲戒処分が可能となる条件

  • 暴言の内容が「懲戒事由」に該当するか
    まずは就業規則に「暴言・パワハラ・職場の秩序を乱す行為」などが懲戒事由として明記されているか確認してください。
  • 客観的な証拠があるか
    録音、チャット、メール、周囲の証言など、単なる言いがかりや一時的な感情表現ではなく、「継続的」または「悪質」と判断できるかがポイントです。
  • 処分の程度が相当か(懲戒権の濫用でないか)
    初回で軽度なら注意・指導で済む場合もあります。
    減給や懲戒解雇は重い処分なので、「再三の注意を無視」「業務に著しい支障」などがないと無効とされる可能性も。

②実施にあたっての手順

  • 就業規則の確認(懲戒事由や手続きが明記されているか)
  • 事実確認・ヒアリング(本人と関係者の意見を公平に聴取)
  • 証拠の確保
  • 処分内容の決定と本人への通告(文書化)
  • 労基署などへの相談(必要に応じて)

注意点

感情的・一方的な判断による懲戒処分はトラブルの原因になります。本人に「弁明の機会」を与えることが非常に重要です。
労働組合がある場合は、団体交渉になる可能性もあります。

Q:年次有給休暇を取らせてもらえません。年休は権利ではないのでしょうか。

回答

はい、ご質問のとおり、年次有給休暇は労働者の正当な権利です。会社が一方的に与える「恩恵」ではなく、労働基準法で保障された法的権利です。

労働基準法第39条により、

一定の条件を満たした労働者には、年休を取得する権利が与えられます。

①以下の2つを満たせば、年休を取得できます

  • 6か月以上継続勤務している
  • その間の出勤率が8割以上ある

→ この条件を満たした場合、10日間以上の有給休暇が発生します(週の労働日数により異なる)。

②会社が時季変更できる条件

  • その日にどうしても休まれると業務が止まってしまう
  • 代替要員の確保が困難
  • 他の従業員も同時に申請しており一時的な人員不足が生じる

注意点

何の説明もなく「ダメ」と言うのは違法です。
年休の取得を不当に妨げたり、取得しようとしたことで嫌がらせを受けたりする場合、パワハラや労働基準法違反として指導・是正される対象になります。

Q:SNSの炎上対策は何が必要?

回答

近年「SNS炎上」は労務リスクとして非常に多く、企業が対応すべき重要事項の1つです。

①就業規則・社内規程でルールを明確化する(必須)

SNSトラブルの多くは、「社員の私的な投稿」が原因です。

そのため、就業規則・服務規律で以下を明記すべきです。

  • 守秘義務(顧客情報・社内情報を投稿しない)
  • 企業イメージを損なう投稿の禁止
  • 個人情報・内部情報の持ち出し禁止
  • 勤務中のSNS利用ルール
  • 違反した場合の懲戒基準

『SNS使用に関する社内ルール』は企業防衛の要です。

②社員向けのSNS研修・ガイドラインを作成する

社員は悪意なく投稿して炎上させてしまうことも多いです。

  • 仕事の愚痴
  • 顧客先での写真
  • 制服姿での不適切な言動
  • 店舗の商品を撮影し勝手にSNS投稿
  • ChatGPTなど生成AIへの社内情報入力

実例を交えた研修や「会社名が特定される行為」への注意、

これらを周知すると炎上リスクが大幅に下がります。

③公式SNSの管理体制を整える

企業の「公式アカウント運用」でも炎上が起きやすいため、以下の体制を整えましょう。

  • 投稿前のダブルチェック制
  • 承認フローの整備
  • 運用担当者の権限を明確化
  • コメントへの対応マニュアル

④ 問題投稿があった場合の初動体制を決めておく

  • 投稿者本人への事実確認
  • 投稿削除の判断
  • 法務・広報・管理部との連携
  • インシデント報告書の作成
  • 再発防止策の検討

これらを「手順化」しておくと混乱が防げます。

⑤ 採用時・面接時にもチェックを行う

企業によっては公開SNSをチェック、X(旧Twitter)などの過激な投稿がないか確認などを行い、リスクを減らしています。(合法の範囲で実施)

ポイント

・SNS炎上は「労務問題」である

 → 就業規則に規定しないと懲戒が難しい

・教育とルール整備が不可欠

 → アルバイトや若年層ほどリスクが高い

・企業の信用失墜につながるため最優先のリスク管理

Q:従業員間トラブルに会社はどこまで関与すべき?

回答

会社は「職場の秩序や安全が脅かされる場合」には必ず関与しなければならない。というのが法律上の立場です。

逆に、完全な私生活上のトラブル(交際・金銭の貸し借りなど)で、職場に影響がない場合は、干渉しすぎる必要はありません。

関与すべきケース(会社の義務領域)

①職場の業務に支障が出ている場合

  • 喧嘩・口論で仕事が止まる
  • 無視・仲間外しでコミュニケーションが機能しない
  • チームワークの低下

これは労務管理上の問題であり、会社は介入が必要。

②ハラスメントが疑われる場合

ハラスメントは、会社に防止義務(パワハラ防止法)があります。

  • パワハラ
  • セクハラ
  • モラハラ
  • マタハラ

などが疑われる場合は必ず調査しなければなりません。

③メンタル不調につながる恐れがある場合

  • トラブルが原因で体調悪化
  • 相談があったのに放置

こうした場合、会社の安全配慮義務違反に問われる恐れがあります。

④ 業務上の指示や役割分担が原因の対立

これは完全に“業務”の問題なので会社の責任です。

  • 関与すべきでない(または最小限)ケース
  • 私生活の問題(職場に影響がない場合)
  • 従業員同士の恋愛のもつれ
  • 個人的な金銭の貸し借り
  • 休日のトラブル・LINEグループでの雑談争い
  • SNS上の個人的な言い合い(業務に影響なし)

基本的に会社は介入してはいけません。

ただし、そのトラブルが職場へ波及した時点で「業務上の問題」に変わります。

会社が取るべき具体的な対応

 ① 事実確認(両者からヒアリング)

感情論ではなく事実を整理する。記録を残すこと。

 ② 必要に応じて配置転換・業務分離

業務に支障がある場合は合理的な範囲で調整可能。

 ③ 再発防止策

ハラスメント研修やコミュニケーション研修の受講。

 ④ 就業規則に「服務規律」「ハラスメント禁止」を明確化

曖昧だと対応できないため、規程整備が重要。

ポイント

・職場に影響があるかどうかが判断基準

 →仕事への悪影響があれば会社が介入すべき

 →私生活だけの問題は原則介入不要

・ハラスメント要素がある場合は必ず対応しなければならない

・会社が放置すると「安全配慮義務違反」の法的リスク

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