Q&Aまとめ集 給与・残業代

Q:課長や部長などの管理職には残業代を支給しなくて良いのですか?
回答
管理監督者に該当する場合、通常の労働者と異なり、時間外労働(残業)に対する残業代の支給義務はありません。
ただし、課長以上を管理監督者とする法律はありませんので要注意です。
管理監督者の定義(労働基準法)
- 経営者と一体的な立場にあるとみなされる。意思決定に関与できる、部下の人事権や業務方針の決定などに関与している。
- 労働時間に対する裁量がある。業務の遂行方法や勤務時間について柔軟な管理が可能。
- 待遇面で一般の労働者と明らかに異なる。賃金や役職手当などで、一般の労働者より優遇されている。
企業が管理監督者を正しく設定していない場合や、その扱いが不適切だと認められると、労働基準監督署による指摘や未払い残業代の請求が発生する可能性があります。そのため、管理監督者としての適用には厳密な条件が必要です。
企業は管理監督者を任命する際には、業務内容や労働時間の管理状況、報酬体系などを十分に考慮し、法的に適正な範囲で運用することが重要です。
Q:会社の昼休憩中に電話当番をさせていた社員から、残業代を請求されました。電話がかかってくるのは1週間に1回くらいです。対応した日だけ支払えば良いでしょうか?
回答
昼休憩中に電話当番をさせていた場合、たとえ電話がかかってくる頻度が低くても、原則として全ての昼休憩時間が「労働時間」とみなされる可能性が高いです。労働基準法では、休憩時間は労働者が完全に自由に過ごせる時間でなければならず、電話当番のように対応を義務づけられた時間は「労働時間」に該当すると判断されるケースがあります。実際に電話対応が発生するか否か、頻度が少ないかどうかに関わらず、待機を命じられているだけで労働時間とされることが多いです。
支払うべき残業代について
- 対応した日だけ支払うのではなく、全ての昼休憩時間を労働時間として扱う必要があると考えられます。したがって、毎日電話当番をさせていたのであれば、その分を労働時間として残業代の対象に含めるのが適切です。
- ただし、電話当番が「時折」という扱いで、業務の必要性に基づく判断でなければ、当番制を見直し、完全な休憩時間を確保する方法も検討することが望ましいです。
このような請求が発生しないように、今後は昼休憩の電話対応を避けるか、どうしても必要な場合は交代制を検討し、労働時間としての手当を適正に支払う方が無難です。
Q:出張が多い会社を経営しているのですが、社員が新幹線で移動することが多々あります。新幹線では何をしてても良いのですが、これは労働時間に含まれますか?
回答
労働基準法上の「労働時間」とは、会社の指揮命令下にある時間を指します。
新幹線の移動時間が労働時間にあたるかどうかは、以下のようなケースで分かれます。
労働時間に含まれるケース
- 業務としての移動(指示された移動)
出張のために業務の一環として移動する場合、基本的に「労働時間」に含まれる可能性が高いです。
例:営業活動としてクライアント訪問に行くための新幹線移動 - 業務をしているケース
新幹線の中で会社の指示で業務を行っている場合、その時間は労働時間に該当します。
例:資料作成、メール対応
労働時間に含まれないケース
- 自由利用可能な移動時間
会社の指示ではなく、完全に自由に使える時間(読書、映画鑑賞、仮眠など)なら、労働時間には含まれません。
例:新幹線で移動中、会社から特に指示されていない時間 - 実務上の対応(みなし労働時間制の活用)
長距離出張が多い会社の場合、みなし労働時間制(事業場外労働のみなし労働時間制)を適用することも可能です。
例えば、「1日あたりの移動時間も含めて〇時間働いたとみなす」とすることで、給与計算が明確になります。
結論
- 移動時間中に会社の指示で仕事をしているなら「労働時間」になる
- 単なる移動時間で、自由に使えるなら「労働時間ではない」
- 頻繁に出張があるなら「みなし労働時間制」の導入を検討するのもアリ
一部判断が難しい場合や、みなし労働時間制にもルールがあるので、導入検討される際は社労士にご相談ください。
Q:他の社員から嫌われているお局社員がいて、社内の雰囲気が悪いです。減給したいのですが、どのようにすれば良いでしょうか?
回答
「お局社員」が原因で社内の雰囲気が悪くなっている場合、減給を検討する前に、その社員の行動や態度を改善する方法を試みることが重要で、減給は最終手段として取るべきです。
①問題の具体的な把握とフィードバック
問題のある行動や態度を具体的に把握します。他の社員からのフィードバックを集めることも有効です。その上で、該当社員に対して1対1でフィードバックを行い、どのような行動が問題であるのか、職場の雰囲気にどのような影響を与えているのかを伝えます。
重要なのは、感情的にならず、具体的な事実に基づいて指摘することです。改善のための具体的な行動を提示し、どのように改善すべきかを話し合います。
②減給の前に注意・警告を行う
改善が見られない場合、減給に進む前に正式な注意や警告を与える必要があります。社内規定に基づいて、口頭または書面で警告を行い、その後の行動に対して期待される改善を伝えます。
警告を行う際には、その内容や理由を文書で記録し、社員に署名させておくことが重要です。
③減給を決定する際の基準
最終的に減給を決定する際には、まずは評価基準が明確である必要があります。評価の基準に従って、どの行動が改善されなかったのかを明確にし、その内容が給料に反映されることを伝えます。
減給の金額や期間についても慎重に決め、法的に問題がないように進めます。また、減給の決定後は、その理由を該当社員に丁寧に説明し、今後の行動について明確な改善策を求めます。
結論
最終的に減給を決定する前に、適切なフィードバックと改善のための努力を行い、社員が変わる余地を与えることが大切です。問題となっている社員だけが原因ではなく、周りのコミュニケーションが影響している場合もあります。外部の専門家に相談して現状を判断してもらうことも検討してください。
Q:いつも頑張ってくれている社員たちを労うために、社員旅行を計画しています。これは出勤扱いにするべきでしょうか?
回答
社員旅行を「出勤扱い(労働時間)」にすべきかどうかは、その旅行の性質や内容によって判断されます。
社員旅行が「慰安・親睦・福利厚生」目的であり、参加も任意である場合は、一般的に「労働時間」には該当せず、出勤扱いにはしなくてよいとされています。
出勤扱いになる可能性があるケース
- 旅行が業務命令として強制参加
- 上司からの参加強要がある
- スケジュールに明確な研修・業務指示が含まれる
- 旅行中に会議や報告義務がある
出勤扱いにしなくて済むケース
- 参加を完全に任意にする
- 社員旅行の案内に「福利厚生目的・参加自由」であることを明記
- 旅行中に業務を行わせない(報告・資料提出・打ち合わせなど)
結論
社員が「実質的に強制だ」と感じる状況だと、たとえ名目上は任意でも、労基署などに指摘される可能性があります。就業規則や社内通知文の文言にも注意を払ってください。
Q:退職する人への退職金制度は止めることができますか?
回答
退職金制度は、就業規則や労働契約で定めていれば、会社の一方的判断では原則廃止できません。
ただし、合理的理由と労働者への周知・同意手続きを踏めば廃止は可能です。
廃止にあたって必要な条件
①合理的理由があること
- 経営悪化や事業再編など、会社存続や賃金維持に直結する理由
- 「他の待遇改善と引き換え」など代替措置がある場合
- 単なる経費削減目的は厳しい
②労働者への説明と同意(または労働組合との協議)
- 不利益変更となるため、説明と理解を得ることが重要
- 同意がない場合でも、合理性が高ければ有効になるケースあり(判例あり)
③就業規則の変更手続き
- 労働基準監督署への届出が必要
- 周知義務(社内掲示・配布・イントラネット等)
実務的な進め方は以下の通りになります。
①現行制度の内容確認
就業規則・退職金規程・雇用契約書を確認
②経営上の必要性を資料化
財務資料・経営計画・コスト試算
③代替措置を検討
基本給・賞与の引き上げ
④福利厚生の拡充など
社員説明会の実施
⑤変更理由・影響・代替措置を丁寧に説明
就業規則改定→労基署届出
注意点
すでに退職金の権利が確定している在職者(勤続年数による部分)は、原則その分は支給義務が残ります。
廃止を急ぐと、労使紛争や労基署からの指摘リスクが高まります。